働き方について

MAMABI MAG 美容業界について
働き方について

【取材・執筆協力】コミュニティサロン と和 / 訪問美容 と和(株式会社社会起業家パートナーズ)・東京都美容生活衛生同業組合

政府によって、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章が策定されたのが平成19年12月18日のこと。策定から10年が経過しましたが、美容業は長時間労働や時短勤務への対応の遅れといった問題が依然としてあります。しかし、長時間労働の撲滅に向けて取り組んでいるサロンは確実に増えてきています。ママ美ジョブ.netではそういったサロンを数多く掲載しています。今回のMAMABIMAGでは、その中でも、美容業界において先進的な働き方を導入し、2018年2月に東京ライフ・ワーク・バランス認定企業として認定された「コミュニティサロン と和 /訪問美容 と和」をピックアップして紹介します。

「訪問美容 と和」の成り立ち

コミュニティサロン と和 / 訪問美容 と和

代表の小池由貴子氏が、訪問美容メインのサロンをオープンするきっかけとなったのは、祖母の影響だったといいます。小池氏が小さい頃、祖母は原因不明の脱毛症の影響でかつらをかぶっており、そんな姿を誰にも見せたくないと自分で髪を切っていたそうです。当時の祖母の口癖は「孫の誰かが美容師になってくれたら髪を切ってもらえるのに・・・」であり、小池氏が美容師になることを決めたのはその思いを受けてのことでした。

時が経ち、小池氏が美容学校に通うため上京する直前のことです。祖母は小池氏を自分の部屋に呼び、かつらを取った姿で見せて、「こうやって美容院に行きたくても行けない人がいる。そんな人の気持ちが分かる美容師になってね」と涙を流して口にしたそうです。小池氏はその時、祖母の想いをいつか形にすることを強く心に誓ったといいます。小池氏は美容学校を卒業すると、大手チェーンで12年働きます。5年間のアシスタント期間を経て、スタイリストになり、お客様ひとりひとりと向き合うことを大切にすることを目的に意欲を持って働いていました。その後、店長に昇格すると、指名数はみるみる増加していきました。そうして、気がつくと、カットは数分、シャンプーやカラーはアシスタントが行うようになってしまっていたとのこと。お客様ひとりひとりと向き合うことを大切にするという、本来の目的から離れていることに気がついてはいたものの、雇われ店長の立場では、売上げ至上主義をどうすることもできませんでした。やりきれない想いを抱えて過ごす日々の中で、28歳の小池氏に病が襲いました。骨巨細胞種という骨に腫瘍が出来る病気で、ひざの骨盤移植手術を受けることになり、術後の半年間は車いすの生活を余儀なくなってしまいました。思うように動けず、精神的なストレスが日々積み重なり、気持ちもナーバスになっていきます。

そんな中、小池氏の気持ちを明るくする出来事がありました。それは、遊びに来た後輩がヘアカットをしてくれたことでした。前髪を5センチ、ほんの5センチ切っただけにもかかわらず。小池氏の気持ちは前を向いていました。そして、同時に「これが美容のチカラ、心に変化をもたらすことができるステキなチカラだ」と強く感じたそうです。そして、自分のように美容院に行きたくてもいけない人にこそ、上質な美容サービスが必要なのだと思い、本格的に訪問美容を事業としてやっていこうと心が決まったそうです。

「訪問美容 と和」が設立されたのは2011年7月。「と和」の名前の由来は「永遠に美しく、お客様と美容をつなぐ、和みの時間を過ごしていただく」という思いからだといいます。「訪問美容 と和」は、そんな強い思いの上に立っている事業です。そして、元気になったお客様が外にお出掛けできるよう、2014年2月、ユニバーサルデザインのサロン「コミュニティサロン と和」をオープンして、様々な事情を抱えて美容室に行けない方へ、美容を提供するようになりました。

コミュニティサロン と和 / 訪問美容 と和

「と和」の改革 ~美容業で初めての東京ライフ・ワーク・バランス認定企業に~

「と和」は事業理念として、「美容のチカラを通じて、笑顔あふれる毎日をお届けします―美容難民に生きがいを、就職難民に働きがいを―」という理念を掲げています。この事業理念の中には、従業員や今働けていない休眠美容師も笑顔にしたいとの思いが込められています。そんな思いから、「と和」は従業員が働きやすい職場作りに注力しています。

「と和」の雇用形態・給与体系は19種類あり、従業員はそれぞれに合った働き方を選択することが出来ます。また、ノー残業デーの導入や施術終了20分後までに退社といった残業削減の取組、勤務間インターバル制度等による働き方の改革、ボランティア休暇制度等による休み方の改革など、働き方改革・休み方改革・両立支援の三つの側面から雇用環境の整備を行っています。雇用環境の整備により、社会的課題であるママ美容師・休眠美容師の雇用にも積極的に取り組んでいます。 こういった取り組みが認められ、「コミュニティサロン と和 / 訪問美容 と和」は、美容業界では初めて、東京ライフ・ワーク・バランス認定企業※に選出されました。

※ 東京都産業労働局が“従業員が生活と仕事を両立しながら、いきいきと働き続けられる職場の実現に向けて優れた取り組みを実施している企業”を評価し、広く公表する認定制度で、2008年度より毎年実施されています。

ライフ・ワーク・バランス

選べる19種類の働き方

ライフ・ワーク・バランス

「と和」の勤務体系の大きな特徴は、19種類の雇用形態・勤務体系を用意していることです。 従業員はその中から、それぞれに合った働き方を選ぶことが出来ます。週に何日出勤できるか、1日に何時間働けるか等の条件をヒアリングし、専用のフローチャートに沿って、給与や雇用条件を決定。また勤務体系は半年ごとに見直すことができ、実際に半年勤務して、その実状に沿って対応することができるようになっています。 歩合制ではないのは、指名が取りたいがための「過剰サービス」「お客様の取り合い」「自分指名以外のお客様への無関心」を撲滅するためであり、従来のサロンのような売上に応じた給与体系ではありません。そもそも従来型の給与体系では、出勤日数、残業できるスタッフが有利になってしまい、短時間労働者には不利であり、時代にマッチしていないものになっているといいます。「と和」では、出勤した日数と時間、それと資格などの職能に応じて給与が決定するシステムになっており、早くから美容師の「同一労働、同一賃金」を実施しているので従業員が非常にわかりやすく、なおかつ、年間の所得の見通しが立てやすいなど、ママ美容師にとっては嬉しいシステムとなっています。

勤務時間インターバル

美容師の長時間労働による疾病への対策として、「と和」では勤務にインターバルを設けています。勤務終了時から次の勤務を開始するまで、12時間のインターバルをしなければ勤務できないのです。例えば、成人式・卒業式・七五三などの早朝対応や、お客様の予約追加などが発生した場合、12時間のインターバルを確保するため、前日・当日・翌日の就業時間を調整しています。これにより実働が所定労働時間より短くなったとしても、労働したとみなし所定の給与を社員に支給しています。

残業削減・休み方改革

サロンにおける一番の繁忙日は土日祝です。「と和」では、1人に対する負担が少ないよう土日祝日を出勤人数が多いシフトにしています。土日祝に出勤してもらう代わりに、土日祝は交代でノー残業デーに設定し、週1回は該当するようにしているとのこと。また、残業時間削減のために、これまでの美容業界では、先輩や上司などが残業していると帰りつらい雰囲気がありましたが、「と和」では、自分の担当するお客様の施術が終了したら、他スタッフの終業を待つことなく、退社するようにルール化されているとのこと。明確にルール化することで、仕事が終えったら帰るという意識付けに成功しています。また、休み方改革にも熱心に取り組んでいます。企業として、正社員に対し、会社に貢献する自発的な行動を応援するため、1年間に1日のボランティア休暇を付与しています。その他、教育訓練休暇等制度、記念日等年次有給休暇制度、リフレッシュ休暇制度、育児・子育て・介護等目的休暇制度など、サロンではまだ導入数が少ない休暇制度を運用しています。 こういった取り組みの成果として、平成27年度の1人あたりの年間時間外労働が7カ月で334時間でしたが、28年度は12か月で416時間と1月あたり27.5%の削減につながっています。また、有給取得率についても。27年度は30%でしたが、28年度は74%まで上昇しています。1人当たりの年間時間外労働が削減され、有給休暇取得率も向上していますが、「と和」は企業として利益を出すことにも成功しており、ライフ・ワーク・バランスの取組開始以降も黒字を継続しています。業績連動の賞与も年2回ありますので驚きです。

年に2回の社員旅行で団結力を向上

ライフ・ワーク・バランス

「と和」の福利厚生の進んだ点としては、年に2回の社員旅行も挙げられます。1回目はハワイに7泊9日で泊まり、もう一回は長期で旅行に行けない社員のために、別途、2泊3日の国内旅行に行っているとのこと。この費用は全額会社が負担しており、社員のリフレッシュはもちろんのこと、団結力向上にもつながっています。

最後に

最後に

「と和」はこれまでの美容業とは大きく違った勤務体系を打ち出したサロンです。ママ美ジョブネットでは、美容師に対する長時間労働や低賃金のイメージをなくすためにも、「と和」のようなサロンを紹介して行きたいと考えております。

【取材協力先】コミュニティサロン と和 / 訪問美容 と和(株式会社社会起業家パートナーズ)東京都豊島区巣鴨4-26-3 03-6359-8621

サロン http://houmonbiyoutowasalon.jp/ 

60歳以上の訪問美容 http://houmonbiyoutowacare.jp/
20歳から60歳未満の訪問美容 http://houmonbiyoutowabeauty.jp/